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フランス人にフランス語を教えたウソのようなお話

土曜日, 10月 29th, 2016

むかしむかし、

僕がまだ学生だったころ、

東京にフランスの大統領がお見えになって、

東京でさまざまなフランスフェアがひらかれたことがあります。

 

たくさんの報道関係の人や政府のお役人に交じって、

フランスの文化使節の一員として、

当時、ドイツ国境の町、アルザス地方のストラスブールという町から、

フィルハーモニー管弦楽団が来日していました。

 

その前年、

フランスでちょっと勉強していたのが縁で、

僕はこのオケの人たちのお世話をするアルバイトにかりだされました。

 

そのとき、

ヴォンヌ・ビニョンさんというヴィオラ奏者のおばさまと知り合いになり、

以後、彼女の離日後も文通を続けておりました。

 

ビニョンさんは当時、40歳ちょっと前だったと思います。

手紙の中で、よくフランス語の勉強のためには、

モーパッサンの短編を読みなさい、とか、

言葉を忘れないために、とかいって、

当時、日本にいた数人のマダムを紹介してくれたりしました。

 

そのうちに、

彼女の手紙を読んでいて、

しばしば呆然とさせられるようになりました。

 

それは、思わぬスペルミス!

 

聞けば、アルザス地方というのは、

戦争のたびに、

ドイツ領になったり、

フランス領になったり、

を繰り返してきたところだそうで、

pha(ファ)とfaの区別とか、

cu(キュ/ク)とku(ク)の区別とかが非常にあいまいで、

fantastique(ファンタスチック~幻想的な)がphantastik、

culture(クチュール~文化)がkutur

とかいった具合に解読不能におちいること、しばしばでした。

 

そこで、あるとき、

ビニョンさんの手紙に「赤」を入れて返信したら、

えらく気に入られて、

いろいろな文書の添削につきあわされるはめになったことがあります。

 

そのビニョンさんも数年前に他界されましたが、

亡くなるまで、年に何回かこうした手紙のやり取りを楽しみました。

 

「芸は身を助ける」じゃないけれど、

フランス人に日本人がフランス語を教えるという

前代未聞の「おもしろい」経験をしたことをとてもなつかしく、

そしてちょっぴりほこらしく思ってみたりもしています。

 

みなさんも、2020年に東京で開かれるオリンピックに向けて、

いろんな国の人々と気持を通じ合わせるために、

今からぜひ外国語にトライしましょうね!

 

教務部H